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社会福祉法人 京都ライフサポート協会
理事長 樋口幸雄

2008年
はぐくむ・はたらく・豊かに暮らす

  1.はじめに
 障害者自立支援法が3年後見直しを前に2006年4月、障害者自立支援法が施行され、同年10月に本格実施に入り、3年目を迎えた。同法は、その成立過程の拙速さ故に、理念と制度設計とのギャップが大きく、その運用に当たっての制度解釈が、朝礼暮改的に揺れ動くため、利用者・家族も事業者もビジョンが持てないでいるのが現状である。
 特に新法に示された理念の実現に必要な報酬単価が、その積算根拠も含め不当に低いなど、理念に見合った財源の保障が最大の課題である。
 こうした実情ではあるが、同法の施行によってさまざまな団体・個人からの議論が噴出し、障がい者福祉、とりわけて知的障がい児・者をめぐる諸問題に、社会の関心が一定集まったことは、今後の運動にとって大きな前進であったし、障がいのある人もない人も住み慣れた地域の中で安心して暮らし、働ける共生社会の実現に必要な支援メニューは出揃ってきたといえる。
 問題はその質と量をどのように確保できるかである。それはひとえに利用者家族の皆様方の思いの丈にかかっているのではないか。

  2.はぐくむ
 人は人の中でしか生きられない存在であり、人として、一人の人間として理解し、育てられなければならない。人の中で生きるためには「嫌なことはさせない」では済まない。できるだけ早い時期に耐性(がまんすること)を身に付けることの重要性の認識が、特に必要となる。付け足しになるが、嫌なことを嫌なままで強要するのではなく、そこには一人一人をよく観察しながらの相当な工夫と愛情をもったうえでの「育む(はぐく)」行為が存在しなければならない。そのことは、人の中で生きることを楽しむことにつながり、グループホームやケアホームでの障がい者同士の暮らしを想定した時、特に重要である。

  3.はたらく
 はたらくことは誰にとってもかけがえのない営みである。それだけに働くことを訓練で終わらせてはならないし、それが有用な、社会的な内容であること=有用で人の役に立つ仕事をしているという実感をもてることが大切である。

  4.豊かに暮らす
 今日一日の大切さは他の一日となんら変わるものではない。居住性を高め、可能な限り普通の暮らしに近づけることが大切である。手厚い介護が用意されれば良いのではなく、環境がわかりやすく構造化されることで、障がいの重い人でも介護されるという受け身な部分が減り、能動的に動けるため、ストレスも軽減されていく。豊かに暮らすとは、利用者のエンパワメントの上に成り立つ生活を実現することにある。