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社会福祉法人 京都ライフサポート協会
理事長 樋口幸雄

2016年8月 
津久井やまゆり園の事件について

 平成28年7月26日未明、神奈川県相模原市にある障害者支援施設「津久井やまゆり園」で起きた大変痛ましい事件。19名もの命を奪い、26名もの人達に重軽傷を負わせた卑劣且つ残忍極まる犯行を断じて許すわけにはいきません。
 今回の事件で犠牲になられ命を奪われた方々のご冥福と負傷された皆様方の一日も早いご回復を心からお祈り申し上げます。特に加害者が同施設に3年間在籍していた元職員であったことは衝撃的な事実であり、同じ障がい者支援を担う事業者・従事者として、安全であるべき施設事業所内において、こうした凶行を防げなかったことを心からお詫び申し上げなければなりません。又、事件に遭遇された皆様の深い心の傷は計り知れず私達関係者はその重荷の一端でも担えるよう行動していかなければならないと思います。加害者が犯行動機とする歪んだ障がい者観や弱者排除の考えは、インクルーシブ社会に程遠い現実を示すものであり、改めて私たちの力不足と果たさなければならない役割・使命を痛感します。
 今回の事件は、世界人権宣言の第一条にある、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は理性と良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」という理念を蹂躙するものであり、戦争やテロが激化する一方の不穏な社会情勢が色濃く影響を与えていることが危惧されます。
 一方では様々なマスメディアによって、加害者の特異な人物像が強調されていますが、はたしてそうなのか。少なくとも施設事業者は、今回の事件を特異なものと受け止めるのではなく、後を絶たない施設事業所における虐待問題と同じ構造として捉えるべきではないかと思います。虐待が起きる背景にある施設環境、従事者の育成や専門性、運営理念や基本方針、つまり環境・スキル・風通しという視点から今回の事件が深く検証されなければならないと考えます。
 報道によって少しずつ明らかにされる犯行動機に繋がる「意志の通じない人達」「生気のない職員」といった言葉が気にかかります。3年もの間勤務する中で、不適切な言動や虐待事実といった今回の事件に繋がる予兆は見えなかったのか、その対応はどうであったのか。これは決して他人事ではありません。初めてこの世界に入り、特に重度の障がいのある人達に出会う新人職員の戸惑いや混乱は非常に大きいものがあります。人手不足も加わってすぐに厳しい支援現場に配属されることは珍しくないのが実情ではないでしょうか。その第一印象がこの仕事を続けるモチベーションに深く関わってくるといえます。介護度の高い強い行動障がいのある人達に接して「厄介な人」「手のかかる人」と受けとるのか、どのように重い障害のある人にも意志があり、様々な方法で懸命にその要求、夢や希望を叶えたいと周囲の人達に必死にコミュニケーションを発し続けておられる一人の人間、主体的な存在として受けとめるのかによって、この仕事の立ち位置が決まります。新人職員の不安や疲弊を支え、障害理解や仕事の意味理解をどう伝えきるのかが法人・施設管理者に求められる最大の課題です。
 こうした事件の背景にある根本的な問題とは別に、再発防止に向けた緊急の対応、ご利用者の安全面の一層の強化が求められています。今回の事件を受け、特に障害者支援施設・グループホーム等の夜間深夜体制における防犯対策は喫緊の課題です。地元警察や自治会との連携等も含め、現在の防災や救急医療等の危機管理に加えて、防犯の強化を取り入れたマニュアルの再策定が必要です。また出来るだけ早くご利用者やそのご家族に防犯対策の現状、今後の取り組みについて説明する機会を設けていただくようお願いします。京都知福協としても、京都府・市、各自治体へ入所施設やグループホームの夜間帯の職員体制の強化、また人感センサーや防犯カメラの設備設置についての経費補助について強く要望してまいりたいと思います。
 以上、京都知的障害者福祉施設協議会加盟施設事業所の皆様方におかれましては本件に対する対応へのご理解・ご協力よろしくお願いいたします。


平成28年8月21日