2006年
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選ばれる施設への挑戦
―小舎制ユニットケア・職住分離の試み―

社会福祉法人 京都ライフサポート協会
理事長 樋口幸雄

  我が国の先達の実践に学び、グランドデザインに先駆けこの4年間、入所施設の職住分離に取り組んできた。「今、できること」「今、しなければならないこと」に取り組んだことでの手応えは、十分に感じている。しかし、最重度者や自閉症等に起因し、環境への不適応に苦しむ人達の自立支援のあり方と、それを支えるスタッフの労働環境という視点からは、多くの課題も見えてくる。地域化による事故や事件が発生する前に、検討すべき課題は多い。

1 はじめに
今回の障害者自立支援法によって、入所施設は「居住施設」となる。
入所施設の24時間機能を「住まいの場」と「日中活動の場」に、分離・分割しようというのだが、今後の居住施設支援はその居住性の質とともに最重度者や自閉症等に起因し、環境への不適応に苦しむ人達が利用者の大多数になることから、支援の専門性が一層求められることとなる。
昨年から今年にかけて、認知症高齢者グループホームで相次いで事件や事故が起きた。
介護職員による殺人事件や多数の死者が出た火災事故、さらにはこの冬、観測史上例をみないという北陸や東北地方における異常な降雪は知的障害者のグループホームも押し潰し、尊い命を奪うという災害も発生した。いずれも、グループホームにおける事件や事故ではあるが、一人夜勤、防災設備の不備、住宅の強度不足という現実は、居住施設関係者に改めて、利用者の「安全」「安心」という事業基盤についての責務を認識させると同時に、強い危惧を抱かせるものであった。
今後、住宅の質の問題に関係者は真剣に向き合わなければならない。
さらにここで触れなければならないのは、普通の「人の営み」から全く外れた時間帯の
みを勤務常態とする居住施設支援の仕事の不自然さ、である。このことの持つ問題は深く、重い。その上にさらに、一人深夜勤のストレスが加わり蓄積された時、問題は深刻な結果を導き出す。それ故に、点よりは線に、線よりは面に、利用者支援の個別化とは全く反するが、支援者を孤立させないことが重要になる。これについては、後段で触れることにする。
 


2 横手通り43番地「庵」について
知的障害のある人のための生活施設、横手通り43番地「庵」は丸4年を迎えた。実際にこの施設を運営し、これで施設は「必要悪」と言わずに済む、というところまで来ることができた。そんな思いがしている。
 日本の狭い住宅事情や急激な高齢化が進む核家族社会の中で、最重度者や自閉症等に起因し、環境への不適応に苦しむ人達にとって、どこで暮らしているか、ということより、どのように暮らしているかがもっと問われなければならない。現実的な視点に立って、こうした人達がどのような毎日を送るのがいいのか。現行制度の枠組の中でその生活の質を高めるために何ができるのか。施設運営の全てをあたり前という視点で捉え直し、形にしていった時、それが横手通り43番地「庵」という形になった。


横手通り43番地「庵」の10のコンセプト
最重度者・強度行動障害者を受け入れる施設
A 完全分棟形式によるユニット〜5or6人単位・全室個室
B 日中活動を分離し、場所も人も分ける〜デイスタッフの厚い配置。遠い活動場所。
C ローテーションのない勤務〜デイスタッフ・ユニットスタッフ固定
D 暮らしの営みのある毎日〜普通の暮らしの中、プログラムで動くのではなく、五感に届く営みのサインに促され能動的に暮らす。
E 施設全体がスヌーズレンルームに象徴される心地よいと感じられる空間〜街角の風情
F 臭いのしない施設〜徹底した掃除
G 週末帰宅奨励
H 駅から徒歩圏内
I 遮音性の高い良質の建物

 


3 強度行動障害とユニットケア
最重度者や自閉症等に起因し、環境に対する不適応に苦しむ人達への支援の専門性は、今、知的障害者福祉に求められている大きな課題であるが、そうした人達の自立支援やその行動の変容に向けての取り組みは、こうした小舎制によるユニットケアの施設でこそできるプログラムである、と確かな手応えを感じている。障害の重い人でも介護されているという受身な部分をできるだけ少なくすることで、能動性を引き出し、高め、利用者のエンパワメントの上に成り立つ生活を実現することが、ユニットケアの目的である。構造化された住環境、利用者とスタッフとの程好い距離感、人と場所を変えての職住分離、週末帰宅による地域や家族との絶え間ない交流、という「庵」の運営コンセプトによる環境調整によって、そうした困難な障害状況にある人達も、その複雑に絡んだ問題の糸が少しずつ解きほぐされ、問題となる行動が激減してきたことは特筆される成果であると考える。根本的な問題として、彼らの持つ耐性の低さは依然として残る問題である。

 

4 これからの居住施設
現行の入所施設の枠組の中でもここまでできるという可能性を「形」にして見せることができたのではないか、発想の転換と柔軟な運営に徹することで、入所施設を利用者本位のものに変えていくことは可能であり、それが我が国の現状にあった有効な方法論ではなかったかと考えている。
これからの施設福祉は「親亡き後」ではなく、より高度な支援を必要とする人達への積極的なセーフティーネットであり、その自立生活の拠点としての機能を明確にしていくことが必要である。今後、障害者自立支援法の理念も踏まえ、「庵」のような方法論と環境を標準化し、さらにその定員を20人、10人というように、分場方式やサテライト方式によってさらに小さな単位にすることができれば、日本型のいい(居住)施設福祉が実現できるのではないかと考える。

 

 

勤務時間帯の中で朝夕のユニットとデイスタッフの重なりに注目していただきたい。8時30分から9時30分、16時から17時、この時間帯の支援量に伴うスタッフ配置の工夫であると同時に、デイとユニットとの引継ぎ、両スタッフのコミュニケーションの時でもある。又、ユニットスタッフは固定であるが、週1回程度、他のユニットに勤務する。これはオールスタッフで生活支援にあたるという意識と業務の密室性に配慮、他者の目が入ることの重要性を意識してのシフトでもある。特に深夜帯の防災体制には最も配慮している。

 

5 おわりに
 現行制度の限界を認識し、挑戦しながら、理想と現実の狭間で知恵を出し合い、若干の無理は承知でようやく、この運営形態が成り立っているというのが、正直なところである。それでも尚且つ、職員の精神の疲弊は避けられないでいる。労働基準法を守ることは、最低限しなければならないことである。労働基準法から除外される職場などあっていいはずがない。デンマークでは特別な場合、1人の利用者に最高10人もの職員配置をした上で、鍵を使わない支援を実現していると聞く。日本でも今後、最重度者や自閉症等に起因し、環境への不適応に苦しむ人達が地域内のより小規模な住居で当たり前に暮らすには、職員配置や住居の質等の制度上の確かな裏付けがなくてはならない

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